研究内容

現在取り組んでいる研究

1.薄膜熱電材料
 熱電材料は熱エネルギーを直接電気エネルギーに変換することができる材料で、材料に温度差を与えた時に電圧(熱起電力)が生じるゼーベック効果を利用して発電することができます。特に薄膜の熱電材料は、発電量は小さいですが微小空間で発電できるため、IoT(Internet of Things)センサの自立電源として期待されています。
 高い熱電特性を得るためには、界面制御したナノ構造が非常に有効です。これまで私は、下記に示すように、大阪大学にSi系材料に対してナノ構造による熱電特性制御を行なってきました。現在は、Mg系Zintl相化合物のナノ構造化エピタキシャル薄膜を作製し、熱電特性制御を目指して研究を行なっています。

※随時更新予定

●これまでの研究

1.ナノ構造熱電材料
 これまで私は、下記の通りナノ構造を含有したSi系薄膜材料やバルクSiGeのナノ構造複合材料、有機無機ハイブリッド薄膜などを作製し、熱電物性の制御を行なってきました。

・ナノ構造含有Si薄膜(大阪大学中村研での研究)
 分子線エピタキシー法により、極薄Si酸化膜技術を用いてナノドット含有Si薄膜を作製し、電気伝導を担うキャリア(電子)と熱伝導を担うフォノンを同時に制御しました。さらに、ナノドットの種類や基板の面方位を変えることで歪みや欠陥を変化させることができ、これらがSiの熱電物性に与える影響を明らかにしました。
[1] S. Sakane, et al., J. Vac. Sci. Technol. A 35(4), 041402 (2017).
[2] S. Sakane, et al., Mater. Today Energy 13, 56-63 (2019).
[3] S. Sakane, et al., Appl. Phys. Lett. 115, 182104 (2019).
[4] S. Sakane, et al., Jpn. J. Appl. Phys. 59, SFFB01-1-5 (2020).

・ナノ構造含有バルクSiGe複合材料(大阪大学中村研での研究)
 ナノ構造を含有したバルクSiGe複合材料において、温度分布を制御することで熱電出力因子を向上させることができることを初めて実証しました(サーマルマネージメントと呼んでいます。)。
[1] S. Sakane, et al., ACS Appl. Energy Mater. 3, 1235-1241 (2020).
[2] S. Sakane, et al., J. Mater. Chem. A 9, 4851-4857 (2021).

・有機無機ハイブリッド薄膜(中央大学田中研での研究)
 光還元法を用いて初めてCu2Seナノワイヤを作製し、導電性高分子であるPEDOT:PSSと複合化させることで高い熱電特性が得られることを示しました。
[1] S. Sakane, et al., ACS omega 7, 32101-32107 (2022).

2.光還元法によるCuナノ粒子合成
 中央大学では、光還元法を用いたナノ粒子の合成やそれを用いた触媒応用、ナノ粒子の局所表面プラズモン共鳴を利用した局所加熱についての研究も行なってきました。

・Cuナノ粒子触媒(中央大学田中研での研究)
 光還元法によりゼオライト細孔内にCuナノ粒子を合成し、ベンジルアルコールの酸化反応に対して高効率な反応を示すことを実証しました。
[1] S. Sakane, et al., ACS Omega accepted.

・Cuナノ粒子のプラズモン加熱(中央大学田中研での研究)
 光還元法により合成したCuナノ粒子を熱応答材料であるPNIPAMと複合し、可視光を照射してCuナノ粒子の局所表面プラズモン共鳴による局所加熱が起こることを実証しました。
[1] S. Sakane, et al., Chem. Lett. 52, 582-585 (2023).